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ほのぼの僧侶とサクラ商会

隔月更新桜サーバー相場調査とほのぼの僧侶ののんびりブログ

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幻想回廊♯1 

<♯1:宿命の発現>


 見慣れたはずの朝日が来ない時、人はまず何処から把握を始めるのか。本人の性格にも寄る事ではある事柄ではある。東雲鳴海(しののめなるみ)の場合は、自身が置かれていたその部屋が昨日まで居たはずの自室でなかった事を再確認する事からだった。明らかに自分が借りていた賃貸マンションの一室でない事は明らかだった。間違いなく壁紙でない白レンガの壁。フローリングでもない建築材がむき出しになった床板。粗い布地のカーテンは閉じたままだった。
「ここは……」
 つぶやきながらベットから降りた鳴海はカーテンに遮られた窓に近づいた。隙間から進入する光からは朝である事以上の事は、窺い知れない。鳴海がカーテンを開け放つと眩しさに目を細めるほどの光が部屋を照らした。光に慣れ外を見やると、やはりそこは自分の知った世界のものではなかった。仮に日本であったとしても自分の知っている場所でない事が鳴海には理解できた。建物は広い平原に建っているのか、いくつかの建物が見て取れる。水辺も視界に移るが果たして湖なのか海なのか、ここからでは判断が付かない。少し離れて森が見え、そこから更に遠くには他と異なり天に届くほどの巨木が見える。なにやら飛行船のようなものが接舷しているように見えるが遠すぎて詳細は伺うことが出来なかった。
 扉が開く音がして、振り返るとそこにはやはり自分の知らない女性がいた。
「目が覚めたようですね」
 全く状況の分からないまま、現れた人物に鳴海は少なからず警戒した。
「ここが何処なのか分かりますか?」
「いや……」
 訝しげに答える鳴海に、女性は微笑んだ。
「警戒されなくても大丈夫ですよ。私も似たようなものでしたから」
 朝日しか光源の無い部屋は薄く影が落ちるが特に暗いというわけでもない。女性の茶色掛かった黒髪の艶やかさが分かる程度には明るく、しかし見知らぬ人物に鳴海は警戒を強める。
「私は瑞原このえ(みずはらこのえ)と言います」
「東雲、鳴海」
 このえに対し簡潔に名乗る。このえは窓に近づき換気を行う為か、窓を開け放つ。春口なのか若干温度の低い風が鳴海の頬をくすぐる。
「ここはゲームの中、という話です」
 このえは素っ頓狂な事を言い出した。鳴海は言っていることが分からずこのえを見る。
「……は?」
 このえも困ったのか眉を顰めながら苦笑する。
「私も聞いただけの話ですので良く分からないんです」
 このえは扉へ向かいながら鳴海を促した。
「少なくとも私達の知る地球上の何処でもない事は分かっているそうです。東雲さんが目覚められたらお連れするように言われていますので、こちらへどうぞ」
 鳴海は警戒を解かず部屋を出た。建物自体はかなり大きなものらしく、部屋を出ると廊下からいくつかの扉と階段が目に留まった。階段に向かうこのえの後を少し離れながら、付いていく。
 階段にはもう一人女性が立って待っていた。
「月乃さんお待たせしました、もうお一方も目を覚まされましたのでご案内しますね」
 このえは月乃と呼んだ女性に声を掛けると二人を階下へ促し自らも階段を降りていく。月乃は無言のままこのえに連なり同じく降りて行った。鳴海はやはり少し離れて後に続いた。踊り場の窓からは先ほど目覚めた部屋からは見えなかった風景が広がる。此方からはこの町が港なのがうかがえた。漁港なのか水揚げされた水産物と多くの船が視界に入る。大きな水面に影が映り視界を上げると大きな船が空から降りてくるところだった。
「船が空を飛んでる……」
 鳴海が驚きながらつぶやくとこのえは振り返り船を見ながら説明した。
「あれは空中島からの物資の積み下ろしだそうです」
「空中島?島が空に浮いているとでも言うのか?」
 聞きなれない言葉に鳴海は眉をひそめこのえを見る。月乃と呼ばれた女性も窓から外を伺っているがやはり無言のままだ。あるいは二人の事を警戒しているのかもしれない。
「詳しい説明は船から降りてくる綜野さんからあると思いますから行きましょうか」
 このえはそのまま階段を降りていってしまう。外の船は水面に着水し波を上げながら港に向かっている。月乃は鳴海を一瞥しそのまま降りていってしまった。


 建物を出ると暖かい陽光が鳴海を包む。白を基調にした町並みはヨーロッパのそれをイメージさせるがやはり明らかに自分の知る世界でない事が分かる。町には活気があるものの、行きかう人の衣服や手荷物が明らかに自分の知る世界のものではないからだ。見慣れた衣服に身を包む姿も見て取れるがやはり少数しか確認できない。そして明らかに異質なのはその共通する点として「武器」としか思えない物を所持している点。剣、弓、槍などの普通ならばありえないものを行きかう人のほとんどが身に着けていたことだった。自分の知る世界ではありえない光景に鳴海は警戒を強めながら、このえに続いた。
 案内されたのは鳴海が目覚めた建物より小さな建物だった。酒場なのか、中に入ると薄くアルコールの匂いが香る。このえは入り口の近くにいた男に声を掛ける。
「綜野さんお二人をお連れしましたよ」
 綜野と呼ばれた男は手に持っていた木箱を床に降ろすと、三人に近づいてきた。
「君たちが今回の漂着者かな、初めまして綜野靖明(そうのやすあき)です」
 血色のよさそうな肌色と無駄のない筋肉の男はそう言いながら鳴海と月乃に握手を求めてきた。鳴海にも見慣れたTシャツとジーンズに見慣れない大きな黒い弓を斜めに身体に掛けていた。
「この世界は初めてだね?」
 靖明はそういうと二人をそばのテーブルに促した。
「綜野さんわたしはこれで」
「瑞原、すまないが梶川を呼んできてくれ。何であれ二人にも説明しておかなければいけない事だ」
 このえはそのまま建物から出て行った。
「では、まずお二人のお名前をお聞かせ願えるかな?名前も分からないのでは不便なのでね」
 鳴海、月乃の対面に腰掛けた靖明はそう切り出した。
「東雲鳴海」
「月乃美穂」
 二人の名前を刻み込むように頷くと靖明は本題に入った。
「軽く聞いていると思うがこの世界はゲームの中だ」
 一言断って煙草に火を付けた靖明は紫煙を吐き出しながらこのえと同じ事を言い出した。
「にわかには信じがたいのですがその証拠は何かあるのですか?」
 靖明は美穂のその疑問に対し、顔を向ける。酒場の店員が三人に飲み物を持ってくる。
「敬語は無しで構わないよ。これはオレの奢りだ、飲みながら話そう」
 靖明はそれに口をつけて、一気に飲み干す。鳴海は警戒しながらもそれに口をつけた。何かの果汁を混ぜた紅茶のようで、紅茶の芳香と果物の甘みが口の中に広がる。靖明はおかわりを注文した後更に続けた。
「実際にオレがやった事のあるゲームの中と全く同じだからさ。他にも心当たりのある者が多く居る。それでは不服かな?」
 美穂は飲み物に口をつけずに続けた。
「元の世界に戻れるのですか?」
 当然の疑問だった。鳴海に関しても日本の生活がある。大学生の鳴海には就職活動という問題があり、こんな場所で遊んでいる場合ではなかった。
「オレは日本からこの世界に飛ばされて、もう1年になる。だが、手掛かりは全く見つかっていない。誰が何の目的でこんな手の込んだまねをしているのか。そもそもその方法はどういったものなのか」
 靖明はおかわりには手を付けず鳴海達に説明を続けた。
「まずはこの世界に関しての説明をしよう。この世界はメイプルワールドと呼ばれる世界だ。ゲームであった時から、そのように呼ばれていたからオレたちもそう呼んでいる」
「メイプルワールド……」
 鳴海はその言葉を反芻するように繰り返し、顔を上げて靖明を見る。
「この町はリスという。見ての通りの港町だが色々便利なので町の住民に話してこの町を拠点にさせてもらっている。この大陸には他に6つの町が存在していて、それぞれにオレたちのような、この世界に飛ばされた人間が集まって元の世界に戻る為の手段を模索しているというわけさ」
「便利と言ったけど、何が色々便利なのかは?」
 鳴海はまず突き当たった疑問をぶつけてみた。靖明は煙草の火を消して、顔を上げた。
「君たちのような漂着者は必ずこの町の近くで発見されるからさ。町の外には危ないモンスターも出没する。このあたりで出没するモンスターは特に気性が激しいと言ったこともないが、それでも全く状況の分からない者が遭遇すれば命に関わる場合もある。それを防止するためにオレはこの町に拠点を置いているわけだ。そしてこの町でこの世界での事情を説明するのがオレの仕事と言うわけだ。他にも港町と言う事で色々情報も入ってくるから、色々便利なんだよ」
 靖明は更に何かを注文したらしく、店員が皿を持ってきた。茹でた芋と豚肉のロースト、それに焼いた厚切りのパンとチーズだった。
「二人とも朝は食べてないだろう?コレもおごるから食べながら続きを話そう」
 豚肉を頬張りながら靖明は二人に勧める。鳴海はパンを、美穂は芋にそれぞれ手を伸ばした。
「とりあえずこの世界での生活はある程度安定させた方がいいから二人にはその説明からだね」
 靖明はそう言うと、この世界の事情について説明を始めた。


                                  ~To Be Continued~



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2000/01/01 Sat. 00:01 | trackback: 0 | comment: 0edit

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